労働安全衛生研究
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原著論文
職場における出来事への長期的なばく露と高ストレス判定の関連
-ウェブ縦断調査による検討-
西村 悠貴 佐々木 毅吉川 徹高橋 正也
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2022 年 15 巻 2 号 p. 95-104

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抄録

職業性のばく露による労働者の負担を減らすためには,ばく露の時間的な側面を考慮した検討が必要である.そこで本研究では,職場における様々な出来事の特に年単位の長期的なばく露に着目し,高ストレスとの関連を検証した.職場における出来事については,精神障害の労災認定基準にある36の具体的出来事を対象とした.

労働者を対象にWEB追跡調査を行った.参加者は個人属性に加え,職場での各出来事の過去1年の経験と職業性ストレス簡易調査票に回答した.2016年11月と2019年2月に調査を行い,11,729名の初回調査参加者から3,556名が追跡できた.初回調査で高ストレス判定だった者を除き,3,071名を解析対象とした.高ストレス判定を従属変数,出来事の経験回答パターン(経験無し,初回調査のみ,追跡調査のみ,両方あり)を説明変数とする回帰分析で,特に出来事への長期的なばく露(両方あり)と高ストレス判定の関連を検証した.

結果,業務の集中や仕事量の変化といった出来事への長期的なばく露は高ストレス判定との関連が強く,労働者のストレスにつながる可能性が示唆された.人間関係や過大な仕事上の要求なども高ストレス判定との関連が示唆されたが,長期的なばく露との関連は見られなかった.本研究から,長期的なばく露との関連が強い出来事や,早期発見が重要な出来事が示唆された.これらの知見を,労働者の健康を守るため適切な労務管理や職場環境改善につなげていく必要がある.

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© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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