労働安全衛生研究
Online ISSN : 1883-678X
Print ISSN : 1882-6822
ISSN-L : 1882-6822
短報
少量の液体試料を用いた噴出帯電の危険性評価方法に関する検討
遠藤 雄大
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 15 巻 2 号 p. 137-142

詳細
抄録

多量の引火性液体を取り扱う化学工場等の施設で発生する火災・爆発事故のうち,液体がノズル等から噴出する際に起こる噴出帯電現象に起因したと推測される事例は少なくない.これまでの研究から,ノズル使用時の噴出帯電量は,液体の種類やノズル材料に特に強く依存することが確認されている.したがって,災害を防止するためには,液体とノズル材料の組み合わせごとの帯電危険性を事前に把握し,大きく帯電する組み合わせを避けることや,帯電危険性に応じた十分な安全対策を講じることが必要となる.一方で,現在までに得られた知見では,液体と材料の組み合わせから帯電危険性を予見することは難しく,実験により帯電危険性を評価する必要がある.そこで本研究では,任意の液体と材料の組み合わせについて噴出帯電の危険性を簡便に評価する方法を提案し,8種類の液体と3種類の材料について帯電量測定を行い,提案方法の有用性について検討した.その結果,組み合わせごとに帯電量に明確な差が生じ,本研究で確認された帯電特性はノズル使用時の噴出帯電に関する従来知見とも一致した.また,比較可能な組み合わせについて,本研究と先行研究の測定値をそれぞれ比較したところ,一部組み合わせを除き,本研究で得られた帯電量は先行研究と同等以上となることが確認できた.以上より,提案方法によりノズル使用時の噴出帯電現象が概ね再現されており,危険性評価にも有用と考える.

著者関連情報
© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top