労働安全衛生研究
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模擬長時間労働時の主観的負担と課題パフォーマンス
劉 欣欣 池田 大樹小山 冬樹西村 悠貴高橋 正也
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2023 年 16 巻 2 号 p. 159-164

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抄録

長時間労働は様々な健康リスクを高め,過労死認定要因のひとつとなっている.近年,高年齢労働者は増加しており,過労死の請求件数も増加傾向である.我々の先行研究では,長時間労働により心血管系の負担が増大するが,特に50代以上の高年齢労働者はその負担増加が大きいことを報告した.しかし,長時間労働時の主観的負担と作業パフォーマンスの変化は不明であったため,本稿ではその解析結果を報告する.30代から60代(65歳未満)の参加者は実験に参加し,9時から22時までの間,3種類の認知課題をそれぞれ45分間行う作業セッションを4回実施した.課題パフォーマンスの指標として各課題の試行数,正解率と反応時間を記録し,主観的負担の指標として疲労,ストレスと眠気を測定した.各指標に対して繰り返しのある二元配置分散分析を行った.結果として,作業者の主観的ストレスと疲労は課題中に上昇したが,年代間の差は認められなかった.課題パフォーマンスは午後の後半(セッション3)と夜(セッション4)で上昇したが,年代間の差は認められなかった.結論として,長時間労働により作業者の主観的疲労とストレスは著しく増大したが,課題パフォーマンスの低下は見られなかった.労働者の健康維持の観点からパフォーマンスが低下しなくても長時間労働が避けられない場合,心身の疲労を蓄積しないよう十分な配慮が必要と考えられる.

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© 2023 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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