工場等での爆発・火災のような静電気に起因した労働災害を防ぐには,可燃性物質の最小着火エネルギーを超える静電スパークを抑制することが必須である.静電気は容器や配管材料と粉粒体などの二つの工業用材料の摩擦で発生し,電荷の一部は固体表面間のマイクロギャップで起こる放電により緩和される.帯電を正確に予測するためには摩擦による本質的な分離電荷量の測定とマイクロギャップ放電による緩和率をそれぞれ定量的に測定することが重要である.我々は,真空中と空気中で金属と樹脂固体を摩擦したときに発生する静電気をリアルタイムに測定するシステムを開発した.本論文では,ステンレスとポリエチレンテレフタレート(PET)の摩擦帯電量を測定し,空気中での帯電量は真空中で測定した分離電荷量に対して1桁ほど小さいことを明らかとした.作業場における静電気発生の典型的なモデルと測定結果を基に,労働災害防止と安全性向上について考察した.