抄録
リスクアセスメント(Risk Assessment;以下,RAと略す)の目的は,事故・災害発生を防止するためのリスク低減措置を事前に検討・実施するために,対象となるプラント(設備)や作業環境などに潜在するハザードに対するリスクを評価することである.RAに基づく労働災害の未然防止を図ろうとする行政施策の下,「RA等を実施している」とする事業場の割合は増えている.しかしながら,実際の操業現場などで実施されているRA等では,RAの目的,評価方法,評価結果に基づくリスク低減措置の検討などが正しく理解されていない場合が多く,真に有効なリスク低減措置が実施されているとは言い難い.
本調査研究では,大手,中小規模十数社の工場見学を通じての安全管理担当者への聞き取り調査と,化学工学会安全部会におけるワーキンググループ活動での企業有識者との議論を通じて,化学プロセス産業(石油,石油化学,化学などを含む)の操業現場を対象とした,RA及びリスク低減措置の検討・実施と,プラントに潜在する危険性情報共有に関する現状と課題についてまとめた.また,それらの課題を解決することを目的とした,プラントライフサイクルエンジニアリングによる統合的リスクマネジメントの進め方の検討について報告する.