抄録
ナノマテリアル取り扱い現場でのエアロゾル計測法の検証のため,多分散凝集粒子を連続して発生させる簡易なシステムが望まれている.粉体取り扱い時の粉じん飛散量を評価する手法として,ボルテックスシェーカーにより試験管内のテスト試料を振動撹拌して試料の飛散性を評価する方法(ボルテックスシェーカー法)が提案されているが,本研究では,ボルテックスシェーカー法をナノマテリアルの連続発生システムとして用いた場合に,どのような発生挙動を示すか検討した.試料には,代表的なナノマテリアルである二酸化チタンナノ粒子(P25)を用い,発生濃度および粒径分布とその時間変動を測定した.その結果,ほとんどの粒子が100nm以上の凝集体として発生することが確認された.微小粒子(サブミクロンサイズ)領域に関しては,時間とともに発生濃度が減少しても粒径分布の形状は維持し,撹拌の状態を改善する目的でステンレスビーズを試験管に加えると,初期の濃度と粒径分布の形状が数時間維持されることを確認した.一方で,粗大粒子(ミクロンサイズ)領域では,初期の濃度を保ったまま長時間発生し,ビーズを加えると,粒子数濃度は増加した.以上の発生傾向を明らかにし,大量の粒子を必要としない粒子カウンターの性能試験やナノマテリアル捕集法検討等への応用が可能であることを示した.