産業化学物質の呼吸器毒性を評価するために,実験動物を用いた呼吸器毒性試験が実施されている.国際的な毒性試験ガイドラインでは吸入ばく露装置を用いた試験が推奨されているが,装置は非常に高価であり,被験物質を大量に消費するため,装置が整備されていない研究機関では実施が困難である.そのため吸入ばく露試験の代替法として気管内投与が用いられている.この方法では実験動物の気管に被験物質を直接注入するため,吸入ばく露と比較して安価で容易に投与が可能である.しかしながら,気管内投与は試験研究機関ごとに投与手法が異なるため,試験結果の比較が困難となる.本稿では気管内投与の結果に影響を与える因子について述べるとともに,労働衛生研究における気管内投与の有用性について記述する.