労働安全衛生研究
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健康経営が中小企業の経営者と従業員に与える影響:記述的ケーススタディ
豊島 礼子 森山 美知子
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論文ID: JOSH-2019-0010-CHO

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抄録

中小企業における健康経営の効果については,産業衛生上大きな関心がもたれている.本研究では中小企業における健康経営実践が従業員と経営者に与える影響を評価することを目的とした.初めて健康経営に取り組む3社(従業員数10名以下,11~49名,50~100名)の計149名の従業員と3名の経営者を対象とした.従業員に対し自記式質問紙を用いて労働生産性や医療費等を測定し,経営者に対してインタビュー調査を実施した.すべての量的指標において統計学的有意差は認められなかった.50人未満の2社ではプレゼンティーイズムの平均値が低下傾向を示し(p=0.13),健康指標と労働生産性指標に改善傾向がみられた.50人以上の1社ではすべての量的指標に改善傾向はみられなかった.これは50人未満の企業で健康経営が1年間で効果的に機能したことを示している.質的データからは,3人の経営者は,開始時は「従業員の健康管理は各自の自己責任である」と認識し,健康経営の必要性を感じていなかったが,最終的には「コストではなく投資」など,前向きな認識に変化した.経営者とのインタビューによって収集された情報は,企業規模に関わらず従業員の健康にこれまで以上に価値を置くようになり,健康経営に対する認識が前向きに変化したことを示している.これは経営者の健康経営に対する意識が,小規模であるほど従業員の量的指標に早期に反応することを示唆している.

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© 2020 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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