論文ID: JOSH-2020-0024-GE
機械の労働災害防止対策では,平成13~25年頃に主に機械のユーザーを対象に“機械包括指針”の策定,安衛法の改正によるリスクアセスメントの努力義務化,プレス機械や食品加工用機械の労働安全衛生規則の制改定が進められた.そこで,この時期の前後での労働災害の発生状況の変化を死亡労働災害の詳細分析によって解明を試みた.得られた結果は次のとおりである.1) 平成元~30年の間に,製造業の雇用者数は1,382万人から988万人へと71.5%まで減少し,これに応じて機械に起因する死亡労働災害の発生件数も減少した.2) 一方,平成元~30年の間に機械に起因する死亡労働災害の発生件数は37.2%まで減少した.したがって,上記1)との差である34.3%が技術的安全方策や人的安全管理策などによって死亡労働災害が純粋に減少した分と考えられる.3) 平成26~30年に発生した災害では,技術的安全方策の困難な危険点近接作業の割合が平成元~14年と比較して有意に増加していた.したがって,今後の労働災害防止対策では,機械の設計・製造段階で技術的安全方策の困難な機械や作業(危険点近接作業や広大領域内作業など)を生産技術的観点から根絶して行くことが特に重要と考えられた.4) 危険点近接作業や広大領域内作業を対象に,新たな労働災害防止戦略を提案した.この結果は,現在多発している労働災害の防止に有効なだけでなく,ISO12100を補完できる新たな労働災害防止戦略の提案としても有効と考えられる.