抄録
悪質ないたずら行為の末に放火事件を起こし,医療観察法病棟に入院処遇となったアスペルガー症候群の事例に関わる機会を得た.事例に対する作業療法では,悪質ないたずら行為の代替となりうる作業を提案するとともに,トークンエコノミーシステムの導入や,悪質ないたずら行為に対する衝動性が高まった際に取るべき対処行動を明確化した.この結果,事例の悪質ないたずら行為を低減させることができ,暫定的な地域移行に繋げることができた.本介入から,問題行動を繰り返す成人のアスペルガー症候群の事例に対する,問題行動の抑止(低減)に向けた作業療法の有用性が示唆された.