抄録
化学療法誘発性末梢神経障害による異常感覚を呈した悪性リンパ腫の症例に対し,理容師としての復職を目標に作業療法を行った.症例は,両側手指末梢に痺れや痛みを主体とした異常感覚を有し,巧緻動作が困難であった.作業療法では,巧緻動作練習,書字や箸操作の課題志向的練習,さらに理容作業練習を段階的に行った.結果として,症例の異常感覚の変化はわずかであったが,巧緻動作は可能となり,理容師として復職できた.このことから,異常感覚を有した手の使用を促進するためには,脱過敏療法を参考とした段階的な物品操作課題や,課題実施において手の健常感覚部位の触覚を活用すること,また症例の役割に立脚した目標と作業練習が重要と考えられた.