嚥下には脳の多領域が関与することがわかっているが, 数ミリ秒単位で実行される嚥下運動に対応し脳活動が数ミリ秒単位でどのように変化していくかは未だ明らかにされていない。そこで中心溝外側領域を覆うように頭蓋内電極を留置した難治てんかん患者1名の協力を得て, 水2 mlを自由嚥下した際の脳活動を記録した。高周波脳律動であるHigh γ帯域に注目し脳活動を解析した。開口運動時や水の口腔内注入時には中心前回, 中心後回の外側領域においてHigh γ活動が出現するが, 嚥下実行時には中心溝外側端と外側溝の間の脳回である中心下回と前頭弁蓋部でHigh γ活動が出現した。本研究はHigh γ帯域活動を経時的に計測することにより, 嚥下に関連した大脳皮質活動が時空間的に変化することを示している。口の運動や水の口腔内注入により一次感覚運動野の口腔領域が活動し, 嚥下運動時には中心下回と前頭弁蓋部が主に活動すると考えられる。