抄録
上腕骨頸部骨折と心不全により入院していた中途失聴の高齢女性に対し,機能改善を目的とした介入を約3ヵ月間行った.日常生活活動は向上したが,何事にも「自信がない」と語り,自己効力感は低下していた.そこで,人間作業モデルによるリーズニングにより,友人とのメールによる交流の再開に着目し,携帯電話のメール送受信が可能となるよう段階的に支援した.その結果,女性はメールの送受信が自立し,友人との関わりを再開させた.価値をおく友人との交流が再開したことで,自己効力感が高まり,生活範囲や対人交流も広がった.本事例から,高齢者における友人との関わりの重要性とコミュニケーション手段としてのメールの意義が示された.