ここ数年,査読を担当して日本の作業療法の進化・発展を肌で感じている.欧米からの論文数には及ばないものの質の高いRandomized Control Trialsが発信されているし,臨床の緻密な観察や仮設検証に基づいたすぐれた事例研究まで学術誌には掲載されている.査読はもちろん大変な作業ではあるが,投稿者とともに日本の作業療法の発展に寄与できると考えると,身の引き締まる思いでもある.
慢性の不眠を有する慢性期統合失調症圏患者を対象に運動を実施し,自覚的睡眠感の改善効果を検証した.対象は平均年齢62.3歳の女性患者9名で,夕方から運動強度約4.0 METsを20分間試みた.10週間,6回/週(計63回),1ヵ月間平均24回実施したところ,日本語版不眠重症度質問票(Japanese version of the Insomnia Severity Index;ISI-J)が改善した.また,運動を中止した1ヵ月後にはISI-Jは悪化した.この結果から,統合失調症圏障害患者の慢性化した不眠に対し,夕方の運動を継続的に実施することは自覚的睡眠感に有用であることが示唆された.
本研究の目的は脳損傷者の自動車運転評価の合否判断を元にVFITのカットオフ値を算出することである.対象は運転評価を受けた65歳以下の脳損傷患者104名であった.医療記録から検査結果及び最終判断結果(運転可/不可)を抽出し,VFITの各項目に対してReceiver Operating Characteristic曲線およびArea Under the Curveを求めた.その結果,Go/no go課題検査のカットオフ値は98%であった.二重課題検査の各Stageのカットオフ値はStageⅠはカットオフ値が60.5%,StageⅡは66.5%,StageⅢは64.5%,StageⅣは54.5%であった.VFITのカットオフ値は今後の自動車運転支援の一助となる可能性が示唆された.