抄録
Pusher現象を呈する脳卒中患者のうち約80%は,発症約3ヵ月でPusher現象が消失すると報告されている.Pusher現象が長引く場合,リハビリテーションの効果は低く,ADLの回復に影響を与え,結果入院期間が長期化するとされている.今回,脳卒中発症後3ヵ月以降もPusher現象が残存し,ADLに全介助を要した症例に対して,Pusher現象の発生機序とされている主観的身体垂直(SPV)の再学習を目的に長期的な作業療法を実施した.結果,Pusher現象が軽減し,ADLの自立度が向上した.Pusher現象の発生機序や病態を理解したうえでの,段階的で長期的な作業療法は有効である可能性が示唆された.