抄録
視覚で誘導される運動錯覚(KINVIS)を用いた介入(KINVIS療法)が,視床損傷に起因する上肢の運動失調に及ぼす影響を検討した.症例は視床梗塞により左上肢に運動失調を呈していた.介入は10日間であり,20分間のKINVIS療法を実施した後に40分間の作業療法を行った.結果は,単回介入による即時効果,および反復介入期間前後で運動失調の軽減を認め,さらに10日後の評価においても機能が維持されていた.さらに,物品操作能力の改善や,生活場面上の問題の改善を認めた.上肢の運動失調に対する治療法として,今後もKINVISの効果を検証していく価値があるものと考えた.