本研究の目的は,「生活行為相互作用評価表」の開発に向けて,原案作成と内容的妥当性の検討を通して試作版を作り上げることである.経験のある作業療法士10名の協力のもと,Nominal Group TechniqueとDelphi法によって内容を収斂し,その後,健常者80名に試行した.その結果,主対象者や実施方法,評価の視点,結果の解釈などを一部改訂し,試作版が完成した.本評価表には生活行為の相互作用を因果的に捉える特徴がある.生活状況や考え方などの質的評価を深める点,相互作用マトリクスによって生活を俯瞰的に分析する点,協業を促進する点などから,作業療法に活用可能な枠組みであることが示唆された.
本研究の目的は,回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の構造を明らかにすることである.構造構成的質的研究を採用し,データ分析にはSteps for Coding and Theorizationを用いた.研究対象者は6名の作業療法士であった.結果は〈治療方針に関わる信念の生成プロセス〉〈上肢機能訓練に関わる信念対立の構造〉〈信念対立解明の手がかり〉の3個のテーマが存在した.信念対立の解明には,自身や他者の治療方針を決定付ける信念の成立根拠を自覚することや,EBPを正確に理解すること,建設的なコミュニケーションをとるなかで対象者の状況に応じた目的を明確化することなどが重要であると考えられた.
軽度左上肢麻痺症例に対し,入院からの4週間は持続的神経筋電気刺激下の促通反復療法を単独で実施し,4週時からの2週間はTransfer Packageを併用した.4週間の単独治療後に上肢機能と物品操作能力,上肢使用の動作の質に改善を認めたが,上肢使用の頻度を評価するAmount of Use(以下,AOU)の改善量は0.07点にとどまった.その後,2週間の併用治療終了後にAOUの改善量は1.43点を示し,上肢使用の頻度の改善を得た.この異なる特徴をもつ治療の併用は上肢機能と物品操作能力,上肢の使用頻度と動作の質に良好な影響を与える可能性が示唆された.