2023 年 42 巻 1 号 p. 11-15
作業療法を「生きる所作」とまで拡張するとき,理念的「わたし」と現実的「外界」という異質なものの接続が見出される.通常その接続面は身体と呼ばれ,理念と現実なる異質なものの出会いを透明化しない,現実へのアンカーとみなされ,尊重される.しかし,身体が理念と現実を媒介する限り,異質な二者は等質化され比較可能なものへ堕す.だからこそ身体は否定されなければならない.この身体を受け入れ,かつ否定する営為を一般化した装置こそ,天然知能である.ここでは,天然知能を,生きる所作をアートへと転回する理論と位置付けながら,同時に著者自身によって実現された「はじまりのアート」の実践について述べ,作業療法概念の拡張を提案する.