作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
42 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
学術部報告
第56回日本作業療法学会学会長講演
  • 村田 和香
    2023 年 42 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士にとって,持続可能性あるいは持続可能な開発目標(SDGs)を考えるとき,その達成には作業療法の果たす役割がみえてくる.作業療法士がSDGs3の「すべての人に健康と福祉を」において大きな役割をもっていることは言うまでもない.作業療法は人々の健康や幸福に関わることを目的に掲げている協会定義にもあるように,日々の生活を大切に,個人の幸せを追求する視点から,対象とする人や取り巻く環境に働きかけている.SDGsに関わることは特別なことでないことを私たち自身が認識すること,そして,そのことを社会に説明できる方法をもつことの必要性を論じ,私たち作業療法士が,自分自身の生活をも大切に考えることの期待を述べた.

第56回日本作業療法学会基調講演
  • 郡司 ペギオ幸夫
    2023 年 42 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    作業療法を「生きる所作」とまで拡張するとき,理念的「わたし」と現実的「外界」という異質なものの接続が見出される.通常その接続面は身体と呼ばれ,理念と現実なる異質なものの出会いを透明化しない,現実へのアンカーとみなされ,尊重される.しかし,身体が理念と現実を媒介する限り,異質な二者は等質化され比較可能なものへ堕す.だからこそ身体は否定されなければならない.この身体を受け入れ,かつ否定する営為を一般化した装置こそ,天然知能である.ここでは,天然知能を,生きる所作をアートへと転回する理論と位置付けながら,同時に著者自身によって実現された「はじまりのアート」の実践について述べ,作業療法概念の拡張を提案する.

原著論文
  • 寺尾 貴子, 冨士井 睦, 津田 明子, 柴田 八衣子, 田村 陽子
    2023 年 42 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    当院で脳卒中・脳外傷者の運転再開に向け実車前評価と実車評価を行った218名に対し,その後の運転実状についてアンケート調査を行った.運転再開可能と判断した者のうち,無事故無違反を継続していたのは59名,何らかの事故や違反を経験していたのは21名であった.2群間で実車前評価の結果を後方視的に検討し,統計学的有意差はみられなかったが,無事故無違反群は病前に比べ再開後の週あたりの運転時間が有意に短かった(p<0.05).再開後に無事故無違反を保つには,脳疲労を起こさない範囲の運転時間に留めるよう指導することや,自動車の代替となる移動手段の利用を提案することが重要であると示唆された.

  • ─リハビリテーションを実施した患者に対する後方視的観察研究─
    藤井 洋有, 近藤 健
    2023 年 42 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は終末期がん患者の在宅復帰の予測因子を検討し,リハの臨床で役立つ視点を提示することである.リハを実施した終末期がん患者102名を対象とし,基本属性,臨床データ,FIM,PPIを診療録より収集した.また,ロジスティック回帰分析で在宅復帰の因子を求め,カットオフ値を算出した.結果,PPIと主介護者以外の同居家族が因子として抽出され,PPIのカットオフ値は4であった.終末期がん患者の在宅復帰支援において,生命予後を踏まえてADLを予測し,リハ目標を設定する必要性を裏づける結果であった.また,PPIのカットオフ値と家族構成は,退院支援の方針を迅速に検討する際,有益な情報になり得ると考えた.

  • ─日本における事例報告および介入研究のスコーピングレビュー─
    佐々木 剛, 谷村 厚子
    2023 年 42 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    日本における入院精神障害者に対する早期作業療法の既存の研究結果を要約し,今後の研究や実践の示唆を得るためにスコーピングレビューを実施した.データベース検索とハンドサーチにて早期作業療法に関する事例研究,介入研究計14論文を抽出し分析した.早期作業療法では精神症状,作業遂行,認知機能の評価の利用が多く,認知心理機能,健康管理能力,日常生活活動,社会生活適応能力の改善を目的に介入が実施されていた.主な成果として精神症状や認知機能,機能的自立度および動機付けの改善が示された.一方で,集団プログラムの目的が不明確な報告が多いこと,作業に関する成果報告が乏しいことも明らかとなり,今後の課題と考えられた.

  • ─スコーピングレビュー─
    駒場 一貴, 渡部 喬之, 青木 啓一郎
    2023 年 42 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,本邦における救命救急・集中治療領域での作業療法実践に関するスコーピングレビューを行い,作業療法の実態を明らかにし,示唆を得ることとした.【方法】医中誌,CiNiiによる検索,Googleによるハンドサーチを行い,選定基準によりスクリーニングを行った.【結果】最終抽出文献は8文献であった.作業療法士が用いる評価指標としては身体機能,認知機能,精神心理機能,ADLの4つの項目で構成され,加えてIADL,環境調整を含めた項目に対して実践していた.【結語】近年,作業療法の報告は増加傾向にあり,本領域における作業療法の報告数の増加や有用性の検証が期待される.

  • ─保護者と支援者間の比較─
    小手川 耕平, 坂本 勝哉, 惠 明子, 安村 明
    2023 年 42 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,療育に通う自閉スペクトラム症(ASD)診断あり児と診断なし児を対象に,保護者と支援者の他者評定の相違を明らかにすることを目的とし,保護者や支援者が発達障害児のどのような特性に着目しているのかを調べた.方法は,自閉症スペクトラム指標児童用を用いて,保護者と支援者それぞれに評価してもらった.その結果,保護者と支援者では社会的スキルの得点に有意差がみられた.したがって,保護者と支援者では,異なる視点で対象児を捉えている可能性があり,ASD児の他者評定に差がみられた社会的スキルを含めて,2者間の情報交換が必要であることが示唆された.

  • 穴田 麻紀, 甘井 努, 新舎 規由
    2023 年 42 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    回復期リハビリテーション病棟へ入院した大腿骨近位部骨折術後患者130例(女性105例,平均年齢82.1±7.8歳)において,退院時の夜間の排泄関連動作の自立の可否とその関連要因を調査した.その結果,退院時に夜間排泄関連動作が自立した者は96例(73.8%)で,自立の可否にてロジスティック回帰分析をおこない,入院時において日常生活活動動作,認知機能,バランス能力が高いこと,失禁を有さないことが有意な因子として抽出された.入院時点で退院時の夜間排泄関連動作の自立の可否を予測することで,機能回復だけでなく介助指導の必要性やタイミングを検討し,早期からの円滑な在宅移行支援が可能になると考えられた.

  • 増田 雄亮, 八重田 淳, 會田 玉美
    2023 年 42 巻 1 号 p. 68-79
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,日本の作業療法士を対象とした新しいEBP自己評価尺度(EBPSA)を開発することである.【方法】全国の回復期リハビリテーション病棟に勤務する作業療法士1,216名を対象として,質問紙による郵送調査を実施した.【結果】531名(回収率43.7%)から回答が得られ,このうち515名のデータを有効回答とした.因子分析の結果,4因子14項目が抽出され,モデル適合度は,CFI=.972,TLI=.965,RMSEA=.048であった.内的整合性の検討では,下位尺度および尺度全体のα係数はいずれも.80以上を示した.【結論】本研究において,良好な尺度特性を有するEBPSAが完成した.

  • 田中 葵, ボンジェ ペイター, 橋本 美芽
    2023 年 42 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士へのインタビュー調査から,彼らが高齢者に対する住宅改修の中で何を考え,どのように専門性を捉えているのかについて,明らかにした.現象学を用いて分析した結果,彼らはADL・移動に加え,IADL・余暇活動・社会参加の支援をOTの専門性と捉えていることが明らかとなった.またその一方で,住宅改修においてOTが捉えている専門性を発揮しづらいさまざまな制約や課題が存在すること,その状況下でOTは実現可能な方法を模索していることが明らかとなった.以上の結果から,OTの専門性やその専門性の発揮の仕方について明確にし,OTの専門性と健康の関連性を具体的に示す必要性が示唆された.

実践報告
短報
  • ─走行中の観察評価とドライブレコーダの操作ログ解析から─
    竹嶋 理恵, 澤田 有希, 近藤 知子, 門馬 博, 原田 祐輔, 硯川 潤
    2023 年 42 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ハンドル形電動車椅子運転時の操作技能の観察およびドライブレコーダで収集した操作ログの評価の有用性を検討することである.ハンドル形電動車椅子操作経験がない地域在住高齢者7名を対象に,屋内テストコース走行中の操作技能を観察と操作ログで評価した結果,観察では課題の難易度や失敗の多さなどを総合的に評価できた.また,操作ログではハンドルやスピード調整の操作特性を定量的に評価でき,衝突につながる危険な運転を検出できる可能性も示唆された.観察と操作ログを用いる評価システムは,操作技能評価において相互に補完しあう有効な手法となる可能性がある.今後は実環境で使用できる評価システム開発を進める.

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