2024 年 43 巻 1 号 p. 88-96
認知症の初期症状から精神科病院への入院に至るまでの経緯と介護困難に至るまでの過程を把握し,必要な援助を明らかにすることを目的にインタビュー調査を行った.得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した結果,徘徊を中心としたBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaによる目が離せない状況や生活時間の減少が,家族介護者の継続的な精神的負担となり,在宅介護の限界につながっていた.また,家族介護者の継続的な精神的負担は被介護者への負の感情へとつながり,精神科病院入院後に再同居を拒否する流れが明らかとなった.被介護者への支援だけではなく,介護者の精神的負担の軽減に焦点を当てた支援も重要と考える.