作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
43 巻, 1 号
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巻頭言
  • 上村 純一
    2024 年 43 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    大学生時代,当時の教授(整形外科医師)が講義の合間に「君たちの専門領域の学術的発展は,他領域の者は絶対に行ってくれない.君たちの手で進めていかなければならない」とわれわれを鼓舞するように話されていた.研究と教育に携わる身となり15年近く経過したが,学生にこれだけ記憶に残るメッセージを伝えられているだろうかと自省すると共に,ことあるごとに自身の行動をこの言葉に照らし合わせている.

学術部報告
原著論文
  • ─介護支援専門員に対する質的解明─
    渋谷 玲二, 岩田 美幸
    2024 年 43 巻 1 号 p. 6-14
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,申し送り書の受け取りからケアプラン作成の過程で医療機関のリハビリテーション職が記載すべき生活行為の情報を明らかにし,申し送り書に必要な情報の構造的枠組みを作ることを目的とした.方法は,ケアマネジャー4名を対象に非構造化面接を実施し,SCQRMおよびSCATを用いて分析した.その結果,83の構成概念が生成され,5つの大カテゴリーを得た.申し送り書は,QOL,役割,習慣を焦点化し,福祉職に具体的な介入方法を提示する必要性が示唆された.

  • ─スコーピングレビュー─
    中村 拓人, 野口 夏蓮, 池田 公平, 笹田 哲
    2024 年 43 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症児への作業療法では,家族をシステムとして理解し,支援することが重要視される.そのため,家族をシステムとして理解するための概念である家族機能を調査することは,作業療法士が家族を支援するための知識を構築する可能性がある.本研究では,スコーピングレビューを用いて,自閉スペクトラム症の家族機能に関連する要因を整理した.6つのオンラインデータベースから資料が検索され,20の文献が基準に合致した.家族機能に関連する要因として,子どもの問題行動や,親の健康状態などを特定した.また,複数の家族機能を改善する介入が存在したが,作業療法士による介入はなかった.

  • 原田 瞬, 立山 清美, 倉澤 茂樹, 丹葉 寛之, 中岡 和代, 川﨑 一平, 永井 邦明
    2024 年 43 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,知的障害区分の特別支援学校における一定のプロトコルに基づく学校コンサルテーションの効果検証とした.小中学部の児童生徒および教員各15名を対象とし,作業療法士(以下,OT)が訪問型のコンサルテーションを実施した.対象児童生徒1名につき3回のコンサルテーション(目標の確認と支援内容の共有のために所定の書式を使用)をプロトコルとし,ゴール達成スケーリング(以下,GAS),異常行動チェックリスト(以下,ABC-J)を効果指標とした.介入後にGASのTスコアは有意に向上,ABC-Jは有意に改善した.OTによる学校コンサルテーションは,各児童生徒の目標達成に寄与し,教員の困り感を減少させることが示唆された.

  • 山中 信, 石橋 裕, 小林 法一, 小林 隆司, 石橋 仁美
    2024 年 43 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,短期集中リハビリテーションで生活機能の改善が期待できる高齢者を選定するための質問紙を作成し,その内容的妥当性を検証することである.本研究は,次の2つの研究で構成される.研究1では介護予防事業の実践者へのフォーカスグループインタビューと質的データ分析法を用いて短期集中リハビリテーションで目標を達成する高齢者の特徴を4領域31項目抽出して質問紙を作成した.研究2では介護予防事業に携わるケアマネや医療専門職に対してDelphi法を用いたアンケート調査を行い,研究1で作成した質問紙の内容的妥当性を検証した.その結果,4領域21項目の質問紙が作成された.

  • 木口 尚人, 齋藤 さわ子
    2024 年 43 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    作業を用いた実践を促進するより良い講習会のあり方の示唆を得るため,作業を用いた評価技術講習会に参加した作業療法士の作業を用いた実践における困難や不安感(以下,障壁)および作業を用いる実践頻度に対する認識の変化を調査した.受講後,セラピストに起因する作業を用いた評価に加え介入への障壁が低減し,講習会1ヵ月後の時点で作業を用いる実践頻度が増加していた.環境とクライアントに起因する障壁の変化はなかった.本講習会のような短時間の介入につながる講義や参加者間の交流の機会は,評価だけでなく介入頻度を促進する可能性があること,環境・クライアント障壁低減には本講習会とは別内容の講習会の必要性が示唆された.

  • ─ WEBアンケート調査─
    佐々木 剛, 新泉 一美, 春口 麻衣, 清田 直樹, 山田 孝
    2024 年 43 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    作業に根ざした実践(Occupation-Based Practice;以下,OBP)の現状を領域包含的,領域別に明らかにすることを目的に全国規模でアンケート調査を実施した.結果,OBPの知識を持ちOBPを実施しているものは半数に満たなかったが,85.6%がOBPの必要性を認識していた.OBP実施には介入時期とOBPの知識が影響を与え,特にOBPの知識の影響が大きいこと,高齢期障害領域では実践現場もOBPの影響を与えていることが明らかとなった.また,OBPの実施意向のある作業療法士は有意にOBPの必要性を認識しており,OBPの知識の深化と信念形成が今後のOBP推進の一助となることが示唆された.

  • 長田 真歩, 助川 文子, 山西 葉子, 伊藤 祐子
    2024 年 43 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,作業療法士11名を対象に彼らが軽度知的障害者の就労促進を図るために,就労に対して取り組む際の視点や支援方法を明らかにすることを目的に,インタビュー調査を行った.分析は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.結果,24個の概念と5個のサブカテゴリーを経て,【幅広いアセスメント】【伴走者としての支援】【就労に向けた支援】【支援の連続性】の4つのカテゴリーが生成された.対象者や企業をあらゆる方向から見てアセスメントをする力や,就労に向けて働く動機を見つけるなどの下準備をすること,将来を見据えてライフステージに合わせた支援を行うことが大切になると示唆された.

  • 佐藤 慶一, 笹田 哲
    2024 年 43 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究は回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)の作業療法士(以下,OTR)が,どのような要因で脳卒中者のトイレ動作の自立度を判断しているかを明らかにすることを目的とした.回復期病棟での勤務経験が5年以上のOTR 7名に個別インタビューを実施し,Reflexive Thematic Analysisにて分析した.結果,97のコードから,8つのテーマ,13のサブテーマが生成された.OTRは8つのテーマによる要因から,脳卒中者のトイレ動作の自立度を判断していると考えられた.今後は,研究参加者や施設数を増やし,さらにテーマを発展させていく必要がある.

  • 福島 敏之, 橋本 彩花, 富永 雅子, 藤村 宜史, 中邑 祥博
    2024 年 43 巻 1 号 p. 78-87
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,鏡視下腱板修復術を行った83例を対象に術後6ヵ月の運動機能の改善が術後1年のDisabilities of the Arm, Shoulder, and Hand(以下,DASH)の改善に与える影響と目標値を調査することを目的とした.術前から術後1年のDASHの改善の有無で2群に分類し,ロジスティック回帰分析で術後6ヵ月の肩関節可動域,筋力,疼痛の改善度と再断裂の有無が与える因子を検討した.結果,有意な変数として外転筋力と疼痛の改善度,再断裂の有無が抽出された.ROC曲線でカットオフ値を算出し,外転筋力,疼痛(以下,NRS)の改善が0.25 N/kg,2.00となった.本研究の結果から術後6ヵ月の外転筋力と疼痛の改善,再断裂の有無が術後1年のDASHの改善に重要であると示唆された.

  • ─修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる質的分析─
    駿河 勇太, 窪谷 和泰
    2024 年 43 巻 1 号 p. 88-96
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    認知症の初期症状から精神科病院への入院に至るまでの経緯と介護困難に至るまでの過程を把握し,必要な援助を明らかにすることを目的にインタビュー調査を行った.得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した結果,徘徊を中心としたBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaによる目が離せない状況や生活時間の減少が,家族介護者の継続的な精神的負担となり,在宅介護の限界につながっていた.また,家族介護者の継続的な精神的負担は被介護者への負の感情へとつながり,精神科病院入院後に再同居を拒否する流れが明らかとなった.被介護者への支援だけではなく,介護者の精神的負担の軽減に焦点を当てた支援も重要と考える.

  • 花田 智仁, 狩長 弘親
    2024 年 43 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    体幹を前方から支持する補助具(以下,体幹前方サポート)の注意機能への有効性を明確化し,Activities of Daily Living(以下,ADL)上での影響について検討した.脳血管疾患患者に対し,体幹前方サポートあり・なし座位でクロスオーバー研究に沿って注意機能の検査および主観点数,荷重中心位置を測定した.結果,体幹前方サポートあり座位は,検査成績および主観点数,荷重中心位置に有意差を認めた.体幹前方サポートは注意機能に対し有効で,ADL上では食事動作の一助となる可能性が示唆された.今後の展望として,対象やさまざまな作業場面を想定した,体幹前方サポートの使用や有用性を検討したい.

実践報告
短報
  • 前田 亮介, 吉村 将太, 渡邉 哲郎, 井手 睦
    2024 年 43 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    テント下病変を有する脳血管障害患者の高次脳機能障害と大脳白質病変(White Matter Lesion;以下,WML),微小脳出血(Cerebral Microbleeds;以下,CMBS)との関連を明らかにすることを目的として,回復期リハビリテーション病棟に入院した患者の診療録を用いてケースコントロールデザインで検討した.その結果,脳室周囲病変の程度と前頭葉機能に関連する検査結果の間,および深部白質病変の程度と前頭葉機能に関連する検査結果の間に関連が認められた.また,infratentorialにおけるCMBSと前頭葉機能との関連が認められた.以上のことから,テント下病変を有する脳血管障害患者ではWML,infratentorialにおけるCMBSと前頭葉機能に関連があることが示唆された.

  • 山田 優樹, 小林 法一
    2024 年 43 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    作業バランスは,これまでの作業療法の歴史における最も重要な概念の1つである.本研究の目的は,スウェーデンで開発された作業バランスの尺度であるOccupational Balance Questionnaire(以下,OBQ)を翻訳し日本語版OBQの言語的妥当性を検討することであった.方法は,Beatonらの自己報告尺度の異文化適応プロセスのためのガイドラインおよびEpsteinらの推奨に準拠して行った.結果,原版の項目の意図を保ちつつ,わが国の文化に適した11項目の日本語版OBQが開発され,言語的妥当性が高まった.今後は,信頼性および妥当性の検討が望まれる.

  • ─実行可能性に関する予備的事例研究─
    加賀山 俊平, 園田 悠馬, 多賀 優佳
    2024 年 43 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究は在宅生活を送るパーキンソン病(以下,PD)患者におけるロボットグローブ(以下,RG)を用いた遠隔監視下の作業療法(以下,OT)の実行性と認容性,ならびに上肢機能,Quality of Life,介護負担に対する有効性の探索を目的とした予備的事例研究である.RG装着と非装着のOTを順に各々週2回・5週間実施し,手の痛みや強い疲労と脱落,簡易上肢機能検査,カナダ作業遂行測定,EuroQol 5-dimension5-level,Zarit介護負担感尺度を6ヵ月間観察した.研究中に有害事象と欠席はなく,RG装着OT後に全評価項目で改善を認めたが,RG非装着で低下し20週後にRG装着前と同等になった.本OTは実行性・認容性・有効性が確認され,在宅PD患者に対するOTの1つとして検討され得る.

  • ~急性期リハビリテーション専門職を対象とした予備調査結果~
    佐藤 雅哉, 増田 雄亮
    2024 年 43 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,急性期リハビリテーション専門職のEvidence-Based Practice(以下,EBP)に関する促進要因を探索的に検討することである.【方法】A病院のリハビリテーション専門職33名に質問紙への回答を依頼した.【結果】全員から回答が得られた.EBP遂行と関連を認めた項目は,EBP実施経験,肯定的経験,エビデンスレベルの高い治療法に関する教育を受けた経験,自己効力感,内発的動機,EBP方法論に関する教育を受けた経験,後輩育成経験であった.【結論】EBPを促進していくためには,EBPに関する臨床・教育の経験を積むと共に,自己効力感や内発的動機を高める必要性が示唆された.

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