2024 年 43 巻 2 号 p. 194-202
上肢の把握動作時の反対側上肢の感覚情報が運動制御に及ぼす影響を検証した.第一実験は,健常者20名の動作を反対側上肢の対象物の把持や視覚の有無から3条件で比較した.結果は,視覚と反対側上肢の把持の組み合わせの条件では手指開口幅が減少した.第二実験は,健常者20名の動作を反対側上肢の把持による対象物の距離とサイズの情報が個別で提供される条件で比較した.結果は,距離の情報が手指開口幅の減少に寄与するが距離とサイズの情報が揃わない場合,手指の開閉に要する時間が増加する傾向であった.このことから,把握動作の制御に寄与するには,対象物の視覚と反対側上肢の体性感覚の統合の空間的明瞭度に依存する可能性がある.