【目的】フロー理論を応用した挑戦と能力のバランスを調整するプロセス(以下,ACS)が,訪問リハビリテーション利用高齢者の生きがい感へ与える効果を検証することを目的とした.【方法】クロスオーバー試験とし,訪問リハビリテーション利用高齢者10名を対象とした.実験期ではACSを実施し,統制期では通常の訪問リハビリテーションサービスを提供した.アウトカムは主観的Quality of Life(以下,QOL)(Ikigai-9)とし,分析には一般化線型混合モデルを用いた.【結果】実験期・統制期間に有意差は認めなかった.【考察】実生活上で直面する課題に関する挑戦と能力のバランス調整は困難となりやすく,QOLへの肯定的作用は生じにくい可能性が示唆された.
今回,半側空間無視を呈した脳卒中急性期患者に対し,麻痺側手に感覚刺激を与えるウェアラブルデバイスを着用し,上肢の反復的な課題指向型練習とTransfer PackageのひとつであるActivities of Daily Living(以下,ADL)での麻痺手の使用練習を中心に実施した.デバイスの装着による麻痺側上肢への注意喚起および使用喚起によりセルフモニタリングが促されたことと,反復的な上肢使用練習により,上肢機能やADLにおける麻痺手使用頻度の改善,および無視行動や麻痺手使用状況への気付き,半側無視症状の改善が認められた.これらのことから,半側空間無視患者に対する介入として,これらの練習を併用する有用性が示唆された.
重度上肢麻痺患者に対するGraded Repetitive Arm Supplementary Program(GRASP)と電気刺激の併用効果をABAシングルケースデザインにて検討した.方法はA期で通常作業療法,B期でGRASPに電気刺激を併用し,1日60分実施した.各期を4週間に設定した.電気刺激は,麻痺がより重度であった上肢近位部へ実施した.結果,B期で上肢機能と生活内使用行動は臨床的に意味のある最小変化量(MCID)を超える変化を示し,生活内における麻痺手の補助的使用が可能となった.重度上肢麻痺に対するGRASPと電気刺激の併用は,上肢機能と生活内使用を改善する可能性が示唆された.
【はじめに】左片麻痺を呈した小児の脳卒中者に対して,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)に加えて家族参加型Transfer package(以下,TP)と自主練習を併用した介入を実施したので結果を報告する.【介入】家族が同席したうえで,装具・電気刺激装置を併用したCI療法を1日1時間,ロボットを用いた自主練習を30分/日を11週実施した.【結果】上肢機能評価において改善を示し,復学に対して前向きな発言が聞かれるといった心理的変化を認めた.【考察】精神的に不安定であった小児例に対して,家族参加型TPや自主練習はモチベーションの維持やモニタリングの改善につながり,麻痺手のみならず,心理面への変化を及ぼす可能性が考えられた.
【はじめに】弛緩性片麻痺によりActivities of Daily Living(以下,ADL)での利き手の使用が困難となった事例に対し,Mental Practice(以下,MP)と課題指向型訓練を併用した.【対象】短期間に二度の脳梗塞(左小脳,左放線冠)を発症した50代男性.発症後2ヵ月時点でBRS上肢・手指Ⅰ.運動イメージ能力・運動主体感の低下を認めた.ADLで麻痺手を使用不可.【方法】MP,課題指向型訓練等を3ヵ月間ADL実施.【結果】BRS上肢・手指Ⅴ.ADLで麻痺手を実用手として使用可能.【考察】本事例は錐体路・小脳損傷により麻痺手を使用不可となり,半球間抑制や学習性不使用の影響も推測されたが,病態を考慮した複合的な介入が回復に寄与した可能性がある.