作業療法
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最新号
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巻頭言
  • 小枝 周平
    2024 年 43 巻 2 号 p. 151
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    学術誌『作業療法』の査読者を拝命してから5年が過ぎ,これまで多くの論文の査読に携わらせていただきました.査読させていただいた論文には,質の高い介入研究や大規模な調査研究,最新の機器を用いた実践報告など,作業療法士として興味深いものが並んでおり,ここ数年COVID-19の影響があったにもかかわらず,日々研究を発展させてこられた先生方には頭が下がる思いです.また,最近では,統計手法も多岐にわたり,これまで扱ったこともない手法を用いて論じている研究も多く,日本の作業療法の発展を感じるとともに,自分自身にもアップデートの必要性を感じるのが,私の中での査読という作業になっています.

第57回日本作業療法学会学会長講演
  • ―作業療法における問題解決の糸口として―
    長尾 徹
    2024 年 43 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    作業療法の実践において問題解決は必至である.ものごとの「仕組み」が分かっていると問題解決につながりやすい.「仕組み」を知らないと合理的に対処できないだろう.講演では筆者が中学生時代から現在までに感心した「仕組み」を順次紹介することで,読者が「仕組み」に着目し,作業療法実践における問題解決の糸口になることを期待した.工具の「仕組み」をはじめとして,学会長決定・開催時期変更,統計,ワードプロセッサー,問題点への対策方法,欲求階層説,段階づけ,アダプテーション,行動変容,アフォーダンス・シグニファイア,掲示物などさまざまな「仕組み」に関する話題に言及した.

第57回日本作業療法学会基調講演
  • ―判断し行動するときの心のクセ―
    川合 伸幸
    2024 年 43 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    自分は合理的で正しい判断をしていると誰もが信じている.しかし,さまざまな要因によって無意識のうちに判断が歪むことがある.認知バイアスとして知られる認知・判断のバイアスは,いまでは100種類以上もあるとされる.経験を積めば,そのようなバイアスが減少すると考えるかもしれないが,むしろ経験を重ねたほうが顕著になるバイアスも存在する.日常のみならず治療の場面でも生じる認知バイアスを軽減するには,まず自身の判断は,簡単に歪められてしまうことを理解することである.このような自身の認知や知識の状態についての認知(=メタ認知)を涵養することが認知バイアスから逃れる第一歩である.

  • ―作業療法における「痛み」解決の糸口を探る―
    松原 貴子
    2024 年 43 巻 2 号 p. 164-170
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    痛みには多面性があり,感覚的側面のほか精神心理的側面が関与し,恐怖-回避モデルに示される痛みの悪循環により慢性疼痛が形成される.慢性疼痛に対する治療アルゴリズムで運動と教育が第一選択治療に位置づけられており,さまざまな内因性の鎮痛機序を介して痛みや併発する諸症状の改善に有効とされている.運動・活動促進に教育などの行動変容アプローチを組み合わせた作業療法は,認知と行動を変容させ,身体活動を活性化させることから,痛み医療において重要な役割を発揮する治療法として期待される.

  • 池田 学, 石丸 大貴, 永田 優馬, 香月 邦彦, 堀田 牧
    2024 年 43 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    2023年6月に成立した認知症基本法では,認知症の人が地域において他の人と共生することの重要性が強調されるとともに,認知症の予防,診断・治療・リハビリテーション等に関する研究成果を普及・活用・発展させるという基本理念が示されている.今後,本法律の理念に沿った地域での生活支援に,科学的な介入や環境調整が実施できる作業療法士(以下,OT)の役割は重要である.また,同年9月には本邦で初めてアルツハイマー病に対する疾患修飾薬レカネマブの製造販売が承認されたが,今後超早期診断が加速し,就労支援や自立した生活の維持のための支援が認知症治療の大きな流れになることが予想される.多職種チームによる疾患特徴に基づく介入の中心的な役割を果たす専門職としてのOTに対する期待は大きい.

原著論文
実践報告
  • ―探索的事例検討―
    廣瀬 卓哉, 丸山 祥, 増田 雄亮, 久保 大輔, 京極 真
    2024 年 43 巻 2 号 p. 222-229
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    本報告の目的は,作業中心のEvidence-based practice(以下,EBP)を支援する臨床教育について事例に基づき探索的に検討することである.対象者は回復期リハビリテーション病院に勤務する作業療法士1名であった.教育内容は,作業中心のEBPのコンピテンシーを参考にした臨床教育を約6ヵ月間実施した.担当する事例の臨床場面における指導や助言に加えて,介入の進捗状況に応じて個別のレクチャーを行った.臨床教育の前後でEBPに対する態度や認識ならびに職業的アイデンティティの向上を認めた.これらの変化は,作業中心のEBPを支援する臨床教育の有用性を示唆する結果であると考えられた.

  • 細川 大瑛, 平山 和美, 大泉 英樹, 馬場 徹, 武田 篤
    2024 年 43 巻 2 号 p. 230-238
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    書類の文字が読みにくいと訴えたパーキンソン病患者を担当した.読みにくさが起こる状況の聴取と検証により,コントラスト感度低下がその原因と考えられた.文字の色調や文字の幅・大きさを変えたことにより,読みにくさが改善した.コントラストを強調させる操作,すなわち背景地と視覚対象の境界検出を容易にしたことが,問題解決に有効であったと考えられた.一連の評価と介入により,読みにくさの原因と解決策が同時に明らかになったのみならず,患者自身の症状理解が深まり,対応策を身につけることができた.疾患に特徴的な病態を理解し,問題が起こる生活状況の把握と詳細な検証をすることが,原因究明や対応策を見出す介入となりうる.

  • 倉 昂輝, 山田 大豪
    2024 年 43 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    小児作業療法において目標指向型のトップダウンアプローチのエビデンスが示されている.本報告の目的は,注意欠如・多動症(以下,ADHD)児と母親の目標に対するホームプログラムの有用性を検討することである.今回,ADHDの診断がある女児と母親に対して,親子との協働の目標設定,家庭の文脈に適応したホームプログラム,適時的なコーチングを行った,その結果,Canadian Occupational Performance MeasureとGoal Attainment Scalingが向上し,目標とした活動に変化が生じた.子どもと保護者の意味のある作業に焦点を当てたホームプログラムを通じて,子育ての文脈の中でサポートを行うことが目標達成に影響する可能性が示された.

  • 山本 勝仁, 竹林 崇
    2024 年 43 巻 2 号 p. 247-253
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    今回,半側空間無視を呈した脳卒中急性期患者に対し,麻痺側手に感覚刺激を与えるウェアラブルデバイスを着用し,上肢の反復的な課題指向型練習とTransfer PackageのひとつであるActivities of Daily Living(以下,ADL)での麻痺手の使用練習を中心に実施した.デバイスの装着による麻痺側上肢への注意喚起および使用喚起によりセルフモニタリングが促されたことと,反復的な上肢使用練習により,上肢機能やADLにおける麻痺手使用頻度の改善,および無視行動や麻痺手使用状況への気付き,半側無視症状の改善が認められた.これらのことから,半側空間無視患者に対する介入として,これらの練習を併用する有用性が示唆された.

  • ―2症例からの検討―
    中島 裕也, 川端 香, 下川 幸蔵, 佐藤 万美子, 小林 康孝
    2024 年 43 巻 2 号 p. 254-263
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    視覚認知障害が移動能力に及ぼす影響,ならびに支援・対応について,既存の報告へ追加の知見を加えることを目的に症例検討を行った.1例目は,視覚性注意障害により,ランドマークを見落とし道に迷う様子や,道路横断に際した判断の遅れを認めた.2例目は,変形視,距離判断障害,オプティックフローの知覚障害といった視知覚の異常から,移動時の距離感や階段・風景の見え方に異常を認めた.2症例とも,従来の視覚情報(地図・目印)を用いた代償手段では,移動能力の改善を認めなかった.脳損傷後の移動能力を精査・支援する際には,多彩な視覚認知機能障害を考慮する必要性が示唆された.

  • ―シングルケースデザインによる検討―
    畠腹 奈生, 大瀧 亮二, 笹原 寛, 齋藤 佑規, 竹村 直
    2024 年 43 巻 2 号 p. 264-271
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    重度上肢麻痺患者に対するGraded Repetitive Arm Supplementary Program(GRASP)と電気刺激の併用効果をABAシングルケースデザインにて検討した.方法はA期で通常作業療法,B期でGRASPに電気刺激を併用し,1日60分実施した.各期を4週間に設定した.電気刺激は,麻痺がより重度であった上肢近位部へ実施した.結果,B期で上肢機能と生活内使用行動は臨床的に意味のある最小変化量(MCID)を超える変化を示し,生活内における麻痺手の補助的使用が可能となった.重度上肢麻痺に対するGRASPと電気刺激の併用は,上肢機能と生活内使用を改善する可能性が示唆された.

  • ―単一事例実験研究―
    中村 麻幸, 川口 敬之, 勝山 基史
    2024 年 43 巻 2 号 p. 272-279
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    社会的相互作用を極端に抑制することを特徴とする回避性パーソナリティ障害を有する事例に対して,作業機能障害の種類と評価を用いた面接に基づく作業療法介入を実施した.介入の有効性を単一事例実験研究デザインに基づき,作業療法参加回数および語りの変化,行動の変化を実施前後で調査した.その結果,作業療法参加回数は有意に増加および維持された.また日々の活動に意味を感じられる語りの変化が見られ,日中生活において主体的な行動の拡大に影響を及ぼした.これより,作業機能障害に焦点を当てた面接に基づく作業療法介入は,回避性パーソナリティ障害のあるクライエントの作業活動への参加に対し有効であることが示唆された.

  • ―意思決定とモチベーション管理に焦点を当てた実践―
    齋藤 結花, 堀 翔平, 竹林 崇
    2024 年 43 巻 2 号 p. 280-287
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】左片麻痺を呈した小児の脳卒中者に対して,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)に加えて家族参加型Transfer package(以下,TP)と自主練習を併用した介入を実施したので結果を報告する.【介入】家族が同席したうえで,装具・電気刺激装置を併用したCI療法を1日1時間,ロボットを用いた自主練習を30分/日を11週実施した.【結果】上肢機能評価において改善を示し,復学に対して前向きな発言が聞かれるといった心理的変化を認めた.【考察】精神的に不安定であった小児例に対して,家族参加型TPや自主練習はモチベーションの維持やモニタリングの改善につながり,麻痺手のみならず,心理面への変化を及ぼす可能性が考えられた.

  • 大矢 涼, 吉田 恭平, 岸 優斗, 高梨 悠一
    2024 年 43 巻 2 号 p. 288-294
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】弛緩性片麻痺によりActivities of Daily Living(以下,ADL)での利き手の使用が困難となった事例に対し,Mental Practice(以下,MP)と課題指向型訓練を併用した.【対象】短期間に二度の脳梗塞(左小脳,左放線冠)を発症した50代男性.発症後2ヵ月時点でBRS上肢・手指Ⅰ.運動イメージ能力・運動主体感の低下を認めた.ADLで麻痺手を使用不可.【方法】MP,課題指向型訓練等を3ヵ月間ADL実施.【結果】BRS上肢・手指Ⅴ.ADLで麻痺手を実用手として使用可能.【考察】本事例は錐体路・小脳損傷により麻痺手を使用不可となり,半球間抑制や学習性不使用の影響も推測されたが,病態を考慮した複合的な介入が回復に寄与した可能性がある.

  • 進藤 潤也, 川野辺 穣, 佐々木 正弘
    2024 年 43 巻 2 号 p. 295-302
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    左半側視空間無視を認めた回復期の2症例に対し,没入型ヘッドマウントディスプレイ機器を装着したVirtual Reality(以下,VR)でのゲームアプリを用いた受動的刺激による介入が左半側視空間無視(以下,USN)の改善に効果があるか,能動的刺激を用いた介入と比較し検討した.その結果,両症例とも能動的刺激を用いた介入と比較しVRによるゲームアプリを用いた介入後で,机上検査にてUSN症状の改善を認める結果となった.多様な介入が求められるUSNへのアプローチの一種として,VRを用いたトレーニングはその可能性が期待できると考えられた.

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