2024 年 43 巻 2 号 p. 254-263
視覚認知障害が移動能力に及ぼす影響,ならびに支援・対応について,既存の報告へ追加の知見を加えることを目的に症例検討を行った.1例目は,視覚性注意障害により,ランドマークを見落とし道に迷う様子や,道路横断に際した判断の遅れを認めた.2例目は,変形視,距離判断障害,オプティックフローの知覚障害といった視知覚の異常から,移動時の距離感や階段・風景の見え方に異常を認めた.2症例とも,従来の視覚情報(地図・目印)を用いた代償手段では,移動能力の改善を認めなかった.脳損傷後の移動能力を精査・支援する際には,多彩な視覚認知機能障害を考慮する必要性が示唆された.