2024 年 43 巻 3 号 p. 437-445
脳梗塞後の出血により着衣障害を呈した60歳代男性の作業療法を報告する.本症例は着衣工程の分析から,身体と衣服の位置関係の理解,着衣手順の誤りを認め,さらに,衣服の構造を理解できないため,着衣開始に際しての衣服の準備(設定)が困難だった.各障害に対し代償的アプローチを用いた.衣服の構造・手順を言語的に代償し,体性感覚を用い,両ファスナーを辿り,襟タグを確認することで着衣開始の設定が可能となった.本症例は重度の構成障害を認めたが,その背景には視覚認知および視空間認知障害があると思われ,視覚以外にも多感覚モダリティを利用した代償的アプローチが有効であることが示唆された.