作業療法
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巻頭言
  • 平賀 勇貴
    2024 年 43 巻 3 号 p. 307
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    学術誌『作業療法』より「巻頭言」について依頼があった際に,私が執筆できる内容は……と頭の中の引出しを出し入れしてみた結果,私自身が継続している臨床研究についてだと思い至り,この文章を執筆している.私の実体験として単一事例から研究を開始し,観察研究や介入研究へと発展させながら,その根拠を臨床実践の枠組み(プロトコール等)へ導入してきたことを振り返る.多くの臨床家から寄せられている相談に,「臨床で研究したいけど,どうしたらよいかわからない」とある.それらの背景として,単一事例研究までは開始し,遂行できるが,さらに観察研究や介入研究に発展させることはハードルが高いということがあげられる.このことは,これまで学術誌『作業療法』に掲載された作業療法介入に関する論文の多くが,単一事例研究であったと報告されている1)ことからも判断できる.

総説
  • 濱本 尊博, 藤本 幹
    2024 年 43 巻 3 号 p. 309-320
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究は高齢者の自立した食事能力を高めるために,どのような作業療法介入を行っているのかを明らかにすることを目的に,過去30年間の学会誌,関連雑誌の事例報告をレビューし分析を行った.その結果,33編が分析対象となりアブストラクトテーブルを作成した.また介入内容を「認知機能」「運動・感覚機能」「環境因子」「個人因子」の4つのカテゴリーに分類した.その結果「認知機能」が8編,「運動・感覚機能」が18編,「環境因子」が16編,「個人因子」が1編に分類された.2010年以降「運動・感覚機能」「環境因子」への介入は増加傾向であり,食事に介入する専門職としての意識が確立されつつあることが示唆された.

  • ─身体障害者,高齢者,健常者を対象とした文献レビュー─
    池内 克馬, 西田 征治
    2024 年 43 巻 3 号 p. 321-329
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    目標設定理論に基づき身体障害者や高齢者,健常者を対象としたリハビリの目標設定後の身体活動や健康行動に影響を及ぼす要因を探索的に整理するために文献レビューを実施した.PubMed,CINAHL,医学中央雑誌で検索された論文8編の記述に対し,演繹かつ帰納的アプローチを用いてカテゴリに整理した.結果,目標設定理論で説明される多様な要因に加えて,動的で多段階のアプローチ,柔軟に変化する目標と行動計画,リハビリプロセス全体を通じた話し合いに関するカテゴリが作成された.これらの要因をプログラムに含めることで,身体障害者や高齢者,健常者を対象としたリハビリ領域でも彼らの身体活動や健康行動を促進できる可能性が再認できた.

原著論文
  • 照井 林陽, 會田 玉美
    2024 年 43 巻 3 号 p. 330-340
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    産業精神保健領域における作業療法士の役割を明らかにし,参入上の課題を検討した.実践者である作業療法士8名に面接調査を行い,Berelsonの内容分析を用いた.精神・心理面への働きかけ,労働者を取り巻く人的・物的環境への働きかけ,メンタルヘルスや障害に関する啓蒙・研修,活動に焦点をあてた働きかけ,対象者のアセスメント,周辺領域の知識・技術に基づく対応,心身両面を重要視した働きかけ,専門知識・技術を総動員した実践の8カテゴリが生成された.実践者は,作業療法士の得意な視点やアプローチ方法を取り入れていることが考えられた.参入には,労働衛生に関する関連法規等の知識面などにおける課題が考えられた.

  • 安藤 悠, 大庭 潤平, 柴田 八衣子, 淺井 康紀, 菊地 理仁, 戸田 光紀, 陳 隆明
    2024 年 43 巻 3 号 p. 341-349
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    在宅生活における義手の実用的使用に関連する要因を明らかにすることを目的に,上肢切断者156名を対象に横断研究を実施した.郵送により基本情報,義手情報,Self-rating Depression Scale(以下,SDS),Disabilities of the Arm, Shoulder, and Hand(以下,DASH)の情報を取得し,機能的義手を使用する片側上肢切断者54名をDASHの点数に基づき,実用群と非実用群に分類した.収集した情報を2群間にて比較した結果,実用群は非実用群に比べ,断端痛が有意に少なく,年齢,受傷年齢,SDSの得点が有意に低かった.在宅生活における義手の実用的使用に影響を与える要因として,年齢・受傷時年齢,断端痛の有無,SDSの得点が関連している可能性が示唆された.

  • 青山 克実, 老川 良輔, 石橋 裕, 山田 孝
    2024 年 43 巻 3 号 p. 350-360
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,筆者らが開発した「作業に焦点を当てた作業療法実践自己効力感尺度」の信頼性・妥当性を検討した.対象は日本国内の作業療法士と作業療法学生とし,オンラインアンケートを用いて246名の回答を得た.探索的因子分析の結果,31項目3因子構造であることが推察された.この予測をもとに共分散構造分析を実施したところ,適合度指標CFI=.911で十分な適合度が確認され,RMSEA=.096は適合度が良いとは言えなかったが,一定の妥当性が確認された.各因子のCronbach's αは.970~.981で内的整合性が保たれていた.

  • ─アクションリサーチを通して─
    杉山 いずみ, 川名 るり, 笹田 哲
    2024 年 43 巻 3 号 p. 361-368
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,重症心身障害者の集団活動支援に関するアクションを起こすことによる,生活支援員と看護師の意識や支援の変化を明らかにすることである.研究デザインは,アクションリサーチであり,集団活動支援の課題と解決方法を立案し実践を通して,生活支援員と看護師の意識や支援の変化に関するデータを収集し,分析した.生活支援員と看護師は,重症心身障害者と一緒に集団活動を行うことが共通の認識になり,安心して支援するようになった.さらに,立場や専門性が異なる生活支援員と看護師に対して,教えるのではなく,活動参加記録の記載により,重症心身障害者の反応に気づくことで,重症心身障害者が楽しむ支援に変化した.

  • 池知 良昭, 石橋 裕, 石橋 仁美
    2024 年 43 巻 3 号 p. 369-376
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,終末期がん患者の作業療法(OT)にて,他職種と協業する作業療法士(OTR)のクリニカルリーズニングを明らかにすることであった.方法は,当該領域のOTRを対象に半構造化面接を行った.作成した遂語録についてKH coderを用い,共起ネットワーク等の分析を行った.結果,看護師や他職種に理学療法とOTの違いを伝え,分からないことは聞く,医師にリハビリテーション場面をイメージしてもらい,OTの処方を促す,他職種とカンファレンスや病棟で直接会って,話す,ADL状況やゴールを共有する,患者の個性に応じた役割を果たす等が抽出された.上記はOTRの行動指針となり,他職種とスムーズな連携につながると考える.

  • 中村 泰久, 長嶺 匠, 朝倉 起己, 嘉数 栄司, 田中 将裕
    2024 年 43 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究では精神科デイケアに通所する統合失調症患者のQOLに影響を及ぼす心理的・環境的要因を検討した.横断研究を行い55名の対象者から基本的属性,家族同居の有無,WHOQOL26, CSQ-8J,精神障害者居場所感尺度を収集した.次にWHOQOL26と有意に相関する項目及び家族同居を独立変数としWHOQOL26を従属変数として重回帰分析をした.その結果,WHOQOL26合計点にはCSQ-8Jによるケアの満足度と家族同居が影響する要因であり,ケアの満足度が家族との同居よりも影響することが明らかになった.ここから統合失調症患者のQOL向上にはケアの満足度と家族同居の有無が重要点と考えられた.

実践報告
  • ─SA-CROTとデイリーノートによる分析─
    菊池 祐介, 山田 竜大, 古館 裕大, 丸山 祥
    2024 年 43 巻 3 号 p. 385-392
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,OSCEや症例検討,報告書作成においてeポートフォリオを活用した学内実習が,クリニカルリーズニング(以下,CR)の自己評価に与える影響とその要因について量的・質的側面から検討することである.学生37名を対象に,SA-CROTを用いて前後比較を行い,デイリーノートを計量テキスト分析にて分析した.結果,SA-CROT総得点・全因子において,実習前に比べ実習後に有意差(p<0.001)を認め,大きな効果量(r>0.5)を示した.計量テキスト分析では実践的評価や症例の情報整理と言語化の過程の経験が描出され,eポートフォリオは省察の機会となり,学内実習はCRの学習に寄与することが示唆された.

  • 山中 佑香, 白戸 力弥, 織田 崇, 和田 卓郎
    2024 年 43 巻 3 号 p. 393-399
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    複数の把持形態が可能な5指駆動型の筋電義手であるbebionicハンドを適用した片側前腕切断症例を担当した.bebionicハンドの特性を考慮した集中的な装着訓練を行い,実用的な把持形態が3種類から5種類へ増加した.最も使用した把持形態は母指外転位のカラムであった.使用率をもとに把持形態の設定と切り替え方法を調整することで,筋電義手操作習熟度評価表による習熟度が72.6%から87.3%に向上した.患者立脚型評価法である日本語版ミシガン手の健康調査質問表の患側ADLが40点から65点,両手動作スコアが53点から75点へ改善した.bebionicハンドは,実用性のある代償手段になる可能性がある.

  • 川口 悠子, 小林 由衣, 齋藤 佑樹
    2024 年 43 巻 3 号 p. 400-406
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    回復期病棟において,脳卒中後に抑うつ的状態となった事例に対し,入院時から作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)による具体的な目標設定を試みたが,悲観的な事例に対し,目標設定に難渋した.しかし,作業機能障害の種類と評価(以下,CAOD)を使用した結果,事例の心理面の理解につながり,事例の心情を配慮しながらADOCを併用することで目標の共有が可能となった.また,その後の支援によって,作業機能障害の改善およびADOCにおける作業満足度の向上が見られた.本事例を通して,ADOCとCAOD併用による包括的アプローチの有用性が示唆された.

  • ─保護者と共にビデオ分析を実施した事例報告─
    大谷 真寿美, 古山 千佳子
    2024 年 43 巻 3 号 p. 407-414
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症児との食事時間に困難さを持つ家族は多い.今回,2名の自閉スペクトラム症児とその母親を対象に家庭での食事場面をビデオに撮り,それを基に母親と一緒に評価し,目標と具体的対策を検討し実施した.事例1は家庭で食べられる物の種類が増え,事例2は離席の回数が減った.2事例ともに子どもの作業遂行能力が向上し,食事時間の母親の遂行度と満足度も向上した.また,母親が自ら子どもの問題を評価し,対応策を考えるようになっていった.これらの要因は,ビデオを介し家族の文脈を理解したうえで母親と協働ができたこと,協働していく過程で母親自身が問題解決できるようになったことが考えられる.

  • 倉澤 茂樹, 立山 清美, 田中 善信, 塩津 裕康
    2024 年 43 巻 3 号 p. 415-422
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    高等学校の通級指導を利用する生徒に対して,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)の適用を試みた.結果,カナダ作業遂行測定により抽出された課題「聞き間違いを減らす」の目標が達成され,課題「数学の成績を上げる」では遂行度1→4,満足度1→4に向上した.さらに,介入後の自己評価による行動チェックリストでは社会性の問題,思考の問題,不安/抑うつが改善した.CO-OPは課題を解決するだけでなく二次障害を軽減する可能性があり,高等学校の通級への作業療法介入として有用であることが示唆された.

  • 齋藤 みのり, 佐野 伸之
    2024 年 43 巻 3 号 p. 423-429
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    当法人における生活介護事業の役割を明らかにし,生活介護事業における作業療法士(以下,OT)の職業認識と求められる役割について把握することを目的として,サービス管理責任者2名を対象にインタビュー調査を行った.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いたデータ分析の結果,14の概念が生成され,生活介護事業所の実情・役割・課題,作業療法の現状,OTのイメージや要望の6つのカテゴリーに分類された.職員との積極的な連携や知識・技術の伝達を求めていることが明らかとなり,事業所内での優先事項の確認や具体的な取り組みの提案につながり,作業療法の質や多職種連携を高めるための行動指針を得る機会となった.

  • 西山 貴裕, 伊藤 大将, 道願 正歩, 近藤 国嗣, 川上 途行
    2024 年 43 巻 3 号 p. 430-436
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    CI療法と他の治療法の併用により大きな治療効果が得られると報告されている.また,脳の可塑性を向上させる治療の1つにKiNvis療法がある.今回,脳梗塞により中等度の左片麻痺を呈した一症例に対し,回復期にて修正CI療法とKiNvis療法を併用した上肢機能訓練を実施した.修正CI療法は,3時間の課題指向型訓練とtransfer packageの活用を3週間実施し,KiNvis療法は自主訓練の開始20分で実施した.その結果,SIAS-m,FMA-UE,MASの改善を示した.CI療法にKiNvis療法を併用することの有用性が示唆された.

  • ~衣服の構造理解が困難な症例への作業療法~
    林 達也, 楠田 耕平, 磯野 理
    2024 年 43 巻 3 号 p. 437-445
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    脳梗塞後の出血により着衣障害を呈した60歳代男性の作業療法を報告する.本症例は着衣工程の分析から,身体と衣服の位置関係の理解,着衣手順の誤りを認め,さらに,衣服の構造を理解できないため,着衣開始に際しての衣服の準備(設定)が困難だった.各障害に対し代償的アプローチを用いた.衣服の構造・手順を言語的に代償し,体性感覚を用い,両ファスナーを辿り,襟タグを確認することで着衣開始の設定が可能となった.本症例は重度の構成障害を認めたが,その背景には視覚認知および視空間認知障害があると思われ,視覚以外にも多感覚モダリティを利用した代償的アプローチが有効であることが示唆された.

  • ─事例報告─
    吉田 丈, 廣瀬 卓哉, 丸山 祥
    2024 年 43 巻 3 号 p. 446-452
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    本報告の目的は,関節リウマチを既往に持つ脳卒中患者に対して作業に焦点を当てた実践を行うことの有用性を報告することである.本事例は脳卒中による片麻痺と関節リウマチの重複障害を認めていた.そのため,脳卒中および関節リウマチに関する疾患特異的な評価ならびに介入を参照しつつ作業に焦点を当てた実践を行った.その結果,作業遂行能力の向上に加えて上肢機能およびQOLの向上を認めた.さらに,ADLの自立度の向上を認めた.これらの変化は,本事例のような関節リウマチおよび脳卒中などの重複障害を呈した事例に対して作業に焦点を当てた実践を行うことの有用性を示唆する結果であると考えた.

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