抄録
ウィーン市は、市街地とグリーンベルトの間にクラインガルテン(以下、KG)があり、近年、健康的に住む空間として注目されつつある。そこで本研究では、ウィーン州建設法(以下「建設法」)とウィーン州 KG法(1979年制定、以下「KG法」)が 1992年法改正によって変わった部分に着目して、その KGの健康的住まいとして変容を明らかにし、我が国の都市フリンジ形成に関する一助にすることを目的とする。 本研究の結果、以下のことが明らかになった。a.第一次世界大戦時に食糧難対策の手段として残余地や跡地につくられたため、市街地内に多く存在している。b. KGに住むという現象は、既に戦間期に市街地に近い別荘地として着目されたものである。c.76年建設法改正で、KG地域はレクリエーション地域の1つ(Ekl地域)になった。d.92年建設法・KG法改正で、住宅要求を満足する KG住宅の建築が可能な Eklw地域が創設され、1999年時点で約1/3の Ekl地域が Eklw地域に変更された。e. Eklwはテラスと部屋が直接的で、南面しているものが多く、住環境が意識されている。f. Eklwは、Eklよりも部屋数が多く設備も充実している。 我が国の市民農園法は、農用地としての性格が強く、別荘や住宅としての性能を確保するには至っていない。特に都市フリンジでは市民農園化を余儀なくされている側面もある。農地貸付を都市的に行う新たな方法として、ウィーンの KGは1つの方向を示していると言えよう。