抄録
本研究は、南海地震が想定される高知市内の2地区において住民に対するアンケート調査を実施し、地域における津波・地震対策の現状、住宅や地域の安全性に対する認識状況、地震に対する危機感、津波からの避難意識、防災対策に対する意向を把握したものである。対象地域では自主防災活動が展開されており、多くの住民が危機意識を持っているが、住宅の耐震化は進んでおらず、その阻害要因として、(1)住民が耐震診断や補強工事の内容や制度について的確な情報を持っていない、(2)地震に対して、予防対策しても仕方がないと考える傾向がある、(3)地震に対する不安よりも将来(老後)への不安の方が勝っている、という3点が明らかとなった。対策意欲に欠ける階層は、年齢が高い世帯、年収が低い世帯、世帯人数の少ない世帯ほど多いという特徴がある。耐震改修を推進するためには、耐震診断や耐震改修に対する補助金などの制度整備、きめ細かい情報提供が必要である。また、お金があっても住宅対策に使うよりは貯金するという傾向の背景には確実に迫ってくる老後の不安が考えられ、これを取り除く施策も必要といえよう。