抄録
本稿は、1956年にスペインで初めて誕生した包括的な都市計画制度である「土地規制および市街地整備に関する法律」の成立の背景を整理し、そこで狙われた意図および限界について明らかにすることを目的とする。1956年土地法は、計画の枠組みとして、地域計画、市町村総合計画、部分計画、特別計画を設定した。総合計画は、都市の発展のモデルを視覚的に提示したマスタープランとしての役割を担った。そして開発が行われる各区域において部分計画を立案することで事業を進展させるという方法論が確立された。また、計画通りに総合計画を進展されるために必要となる土地は、事業実施制度と呼ばれる制度を通して獲得されるとされた。これは土地投機の回避も狙ったものであった。しかし、その理念と手法は、基本的には拡張主義的であり、歴史都心に代表される稠密な既成市街地における適切な事業実施は、この時期には置き去りにされたままであった。