都市計画論文集
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石川栄耀の広場設計思想
新宿コマ劇場広場をめぐって
西成 典久斎藤 潮
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2004 年 39.3 巻 p. 907-912

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抄録

歌舞伎町及びコマ劇前広場は戦災復興期に石川栄耀によって設計された。本研究の目的は、石川の言説とコマ劇前広場及びその周辺空間との関連を精査することにより、石川の広場設計思想およびコマ劇前広場創出の背景を明らかにすることである。結論は以下の3点である。1)石川は日本に広場がないことを指摘し、「広場は民主社会の表現であり、文化の進んだ都市が持っている」としたが、広場の社会的機能(市民交歓)においては、西欧の広場と日本の商店街に共通性があることを見出している。また、将来的に日本の市民交歓は広場の形態に移ると考え、コマ劇前広場はその為の布石であったと考えられる。 2)石川は計画案において自身の設計論を広場に反映したが、 GHQの建築統制により計画案が頓挫し、広場に盛り込まれた石川の設計手法(Terminal vista)は実施案において実現されなかった。3)広場を導入するにあたり、石川は単純に西欧広場の形態を模倣したわけではなく、広幅員街路のネットワークの終端部に広場を布置することにより、歌舞伎町の土地利用や街路ネットワークと有機的に関係した広場を歌舞伎町において実現しようとした、と考えられる。

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© 2004 公益社団法人 日本都市計画学会
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