抄録
近年、途上国の都市貧困分野においては、所得・消費水準のみでは人びとの福祉を測定するには不完全であること、さらには、貧困層自身の観点を貧困概念の基礎とすべきであること、等が主張されている。本論は、このような新たな観点から、コロンボにおいて参加型調査方法を導入し、過去の行政調査の諸前提を批判的に振り返り、貧困理解をとらえ直す試みである。貧困層自身による貧困概念は多様であること、しかし最も基本的にはフォーマルな制度や資源や意志決定からの排除が重視されていることが、明らかになった。したがって都市貧困の行政的な定義は、経済的・物質的側面に止まらず、制度的・社会的な側面を取り入れるとともに、定義や調査項目・方法そのものに貧困者の声を反映させていく「プロセスにおける参加」を保つことが、重要となる。