抄録
本研究は、地区ごとの将来の年齢階層別人口を予測する方法を提案することを目的とする。すでに整備、公開されている国勢調査地域メッシュデータの中には年齢階層別人口の情報が含まれているため、年齢階層別生残率を用いて自然増減を予測することは可能であるが、小地域の社会増減の予測方法は確立していない。小地域になれば、コウホート (同時出生集団 )ごとの社会増減率は安定的でないことや、データ量が膨大になることから、市町村レベルの予測で使われているコウホート変化率法を適用することが難しいためである。そこで本研究では、コウホートごとの変化量を因子分析により集約し、より少ない要素にまとめて安定的に捉えるとともに、その因子得点の時間的推移を説明するベクトル自己回帰モデルを作成することにより、入手可能なデータを最大限に活用して社会増減の予測を行う方法を提案する。広島市とその周辺の 626個の 4次メッシュ(1辺約 500m)に予測手法を適用して手法の有用性を確認する。