抄録
1936年、台湾総督府は内地日本の旧都市計画法(1919:以下、旧法)を母法とした台湾都市計画令を立案した。共通する都市計画技術を基本構造とする旧法と台湾都市計画令を比較することを通して、台湾都市計画令の特徴及び台北市での運用・実施段階での成果を分析することは、日本の都市計画史研究上も大きな意義がある。本研究では、当時内地で発行された資料や現地での調査を基に、第 6次市区計画及び台湾都市計画令を旧法との相違点、その背景・意図等の視点で比較し、台湾都市計画令の特徴を明らかにしている。それらは、 (1) 旧法上の議論を踏まえた制度的先進性、 (2) 伝統・風土の考慮を背景とする特殊性、 (3) 植民地統治による私権の制限を背景とする特殊性にまとめられる。また、内地では郊外地の整備が後追い的になったのに対して、台湾では先行的にコントロールできた点は、内地の失敗の克服という点で最も際立った特徴である。