2006 年 41.3 巻 p. 103-108
近年では,有料道路の料金の弾力的な運用により,一般道路からの経路変更を促す有料道路社会実験が多く実施されるようになってきている.しかしながら,通勤混雑問題に焦点を絞ると,日本社会では多くの場合通勤費用を企業が負担しているため,料金政策が直接通勤者の行動変化につながらない可能性がある.つまり,通勤者の行動の変化は必ずしも通勤者だけの意志で決定しているとは言えない.そのため,有料道路社会実験でも予想していたほどの十分な経路変更がなされないなどの問題が起こっている.そこで本研究では,企業アンケートを実施し,企業の通勤手当の支給,および通勤支援策の実態を明らかにするとともに,有料道路の料金変更に対して企業がどの程度料金負担の柔軟性を持っているか,またその他のTDM施策を含めた通勤問題に対する取り組み実施実態・意向などを明らかにすることを目的とする.これらの分析結果より,通勤手当として約9割の企業が通勤費用を支給していること,さらに有料道路の料金負担についても13%の企業が支給していることを明らかにした.