高齢社会の対応の一つとして、利便性などを享受できる中心市街地に高齢者用住宅を整備する政策が進められている。しかし、実際に高齢者用住宅の実態を踏まえた上で高齢者のライフスタイルと住み替えの(移住)意向の関係を示した研究は行なわれていない。そこで、本研究は長岡市をケーススタディとして、高齢者の移住に対する需要や条件などを明らかにし、今後の住宅政策に対する課題を整理することを目的とする。研究の結果、高齢単身世帯は中心部で多く、同居世帯は農村部で多いこと、移住に対する意向には地域差がなく、同居世帯に比べて高齢者のみ世帯の方が強いこと、高齢者の多くが、「移住」と「施設入居」が全く異なるものであると認識していることが明らかとなった。移住を促進するためには、家賃が低廉であること、健康状態が悪化しても住み続けられること、住宅のみならず中心市街地全体の一体的な整備が必要といえる。