本研究では、尼崎市産業連関表を独自に作成し、市内の複数の大規模工場15箇所が2000年から5期15年に渡って移転することを想定し、跡地に想定し得る用途が立地した場合の経済波及効果等を推算した。工場移転によるマイナスの波及効果は今シミュレーションで想定した新用途が立地する場合には、移転のみが生じた場合に比べて104,932百万円分、波及効果が増加し、マイナスの波及効果を新規立地の用途によって約9割補填しうることがわかった。新用途の立地では、商業やサービス業、住宅などを想定したため、製造業では5期を通じて生産額は大幅に減少しているが、移輸出率が平均より小さい非基盤的産業のパルプ・紙・紙加工品、出版・印刷では生産額が増加することが分かった。新用途が想定の通りに立地するという保証はないが、市内生産額や生産波及効果が大きくマイナスにならないよう産業や工場の移転の順序を考慮する必要のあることなどが明らかになった。