2006 年 41.3 巻 p. 73-78
わが国の地方都市では、モータリゼーションの進展と都市の郊外化により、中心市街地の空洞化が進んでいるところが多い。このことについて、公共交通指向型都市開発の考え方に基づいて、路面電車やLRTを生かしたまちづくりが注目されている。札幌市の路面電車は、利用者の減少によって厳しい経営状況にあり、存続か廃止かについて議論され、札幌市長は2005(平成17)年2月、存続させることを表明した。この表明を受け、札幌市では路面電車の活用方策についての検討が進められている。路面電車の利用者数は、サービスレベルとともに、沿線地域の交通の発生・集中に起因する。つまり、沿線地域の土地利用が有効になされていることが重要である。しかし、札幌市は都市の郊外化に伴って、住宅の空き家率、オフィスの空室率が高く、必ずしも有効な土地利用であるとは言えない。本研究は、沿線地域の土地利用の効率化が、札幌市の路面電車の利用促進に与える影響を明らかにすることを目的とする。特に、空き家・空室に着目し、効率的に有効活用ことで路面電車の利用促進にどの程度寄与するかを明らかにするものである。