2006 年 41.3 巻 p. 737-742
ヴァリアンスとは、北米において、建築計画をゾーニング条例に定める規定を字句通り適合させずに同規定の趣旨に合致することをもって許可する仕組みであり、ゾーニング制度を補完する仕組みである。ヴァリアンスの運用にあたっては、北米の場合、同条例に適合することが難しい場合に限ってヴァリアンスを発動することとしているが、本研究が調査するカナダ・トロント市においては、この制約がなく、同条例に定める建築形態規制や用途規制に対するヴァリアンスが広範にできうる。本稿ではトロント市におけるヴァリアンスの運用の実態を調査し、ヴァリアンスがゾーニング制度に機動性を与えている同時に、ヴァリアンスの許可不許可をめぐって不服申し立てが少なくなく、これを審査するオンタリオ州との間での見解の相違を明らかにし、ヴァリアンスの審査における問題点などについて考察を加える。