本研究では全国の伝統工芸産地を研究対象とし、芸術家の増加,生業の体制、地域振興の取組の関係を分析し、地域振興の取組における芸術家の役割を明らかにした。得られた知見は以下の通りである。1) 事業所や販売額の縮小により産業として活力が低下しており、一貫生産や直売に社会構造が変化している。この状況の中で、まちづくりや伝統工芸を活用した教育やコミュニティづくりをおこなうなど地域住民のくらしづくりを行い、地域としての総合力を高めていこうとしている産地も見られる。2) 芸術家はものづくりだけでなく、まちづくり,特にくらしづくりの地域振興の取組に多様に貢献している。3)具体的には地域振興の取組において、芸術家は技術を伝える、体験指導を行う、展示・発信・発表をする、新商品のデザイン提案をする、交流を担うという役割を果たしている。