抄録
本研究で対象としたタイでは、2003年にCODI(Community Organizations Development Institute)の支援を受け、全国の都市貧困層2千地区の住環境改善を行うことを目的に、Baan Mankong Programが開始された。この大規模な参加型の開発事業の中で、新たな開発方式として、バンコクのボンガイ地区など、数地区において開発過程で小規模な住民組織を組織化して事業を実施している点に着目した。コミュニティを対象にした再開発、修復型開発のいずれにおいても、従来はコミュニティ全体をひとまとまりとした開発がなされることが多い。この場合、全体の合意をどのように形成するかが課題であり、ともすれば行政機関やリーダーシップによるトップダウンが先行しがちである。そこで本研究では住環境整備を目的としたコミュニティ開発方式における小規模住民組織の組織化過程、役割、特性について、事業が実施されたボンガイ地区の事例を中心に計画論的視点から考察する。