抄録
本論文は,密集市街地の住環境改善のための規制誘導手法のうち,接道不良の敷地群を対象とし,近隣間や街区で協調的に個別更新を行う複数の手法に着目して,それらの適用条件を考察することで,協調的な手法の有効性を示すことを目的とする.そのため,神戸市の密集市街地を対象にして,1)接道不良区域の抽出と対象の選定を行い,2)手法適用事例におけるヒアリング調査により,合意形成プロセスの実態把握と考察を行う.さらに3)接道不良区域における手法適用モデルの検証より住環境改善の有効性を検討する.その結果,接道不良区域での協調的住環境改善手法の適用では,各手法の適用基準により適用可能範囲が異なること,合意形成プロセスでは,物理的要因,社会的要因,補助的要因,人的・経済的要因の4つの要因が短期的な合意にいたる条件であること,モデル街区の検証では,敷地条件に応じて,従前延床面積の確保,有効空地面積や歩行者空間率の増加が確認された.