抄録
本稿は世界遺産に登録されている宮島を事例として,文化資本が持つ価値とその構造に,経済学の枠組みを用いて実証的に明らかにするものである.この研究ではCVMおよびトラベルコスト法を用いて,文化資本の持つ価値構造にアプローチしている.分析の結果,宮島の文化資本は他の価値と比較して大きな使用価値を派生していることが明らかになった.また,総価値は社会資本を,その維持に使用するのに十分大きな値であった.これらの結果は社会資本の維持において,利用者負担,一括税による負担のいずれを採用すべきかを考える上で大変興味深い.この研究は一次的なアプローチであり,今後,これらの情報が文化政策の決定に貢献することを期待する.