抄録
平成10年度に旧建設省の要綱制度として高齢者向け優良賃貸住宅がスタートし、平成13年度に高齢者居住法に基づく法定事業となり、内容も改正された。多くの高優賃では家賃対策補助が実施されており、入居者の負担(入居者負担額)は本来の家賃(契約家賃)よりも減額されている。この入居者負担額は国交省告示で定められている入居者負担基準額に設定されているケースが多いが、これに起因する問題点も多い。そこで、本研究では、全国の高優賃について収集した契約家賃及び入居者負担額のデータ、及び、16都道府県において自治体担当者等を対象に実施したヒアリング調査の結果から、高優賃の入居者負担額算定方法の問題点と今後のあり方について検討を行った。研究の結果、1)従来用いられてきた入居者負担基準額による設定では、立地の差が十分に反映されない問題を抱えていること、2)契約家賃と入居者負担額の差額の大きい住宅があり、補助期間終了後の家賃上昇によって退居を余儀なくされる世帯が生じる危険性が高いこと、3)都市部の自治体を中心に入居者負担額に契約家賃を反映させる方法へと変更してきており、メリットが大きいことが明らかになった。