抄録
本研究は大規模な戸数削減を伴う再編計画が策定された香川県営住宅を事例として、再編によって転出を余儀なくされる世帯について、現行の計画にもとづいた場合の転居の可能性を想定した。廃止予定住戸に居住している1,740世帯の転居が必要となることを概算した上で、転居先となる県営住宅の空き住戸の分布、および転居先の条件を満たす民間賃貸住宅の市場における位置づけを検討した。その結果、1)県営住宅の空き住戸が受け入れることができるのは転居を要する世帯の3割にとどまり、その転居先は市街地の外縁や他の市町となることが想定されること、2)高松市内における全戸廃止団地の住戸面積と家賃に相当する民間賃貸住宅は現在の市場にみられないこと、3)公営住宅居住世帯の平均的な収入層の家賃負担限度額を世帯人員別に推計したところ、市場家賃にもっとも近いのは2人世帯であること、を明らかにした。これらの結果を受け、転居を要する世帯が入居できる住宅は、県営住宅と民間賃貸住宅を含めても大きく不足すること、転居先が遠隔地となる場合があること、の2点を課題として指摘した。その上で転居先の戸数に見合った削減戸数の見直しを提起した。