本研究では、2003年に施行された「都市計画提案制度」について全国的な運用実態を明らかにするとともに、住民発意型の地区計画提案事例に着目し、地区住民が居住環境の保全を目的として提案制度を利用する際の提案プロセス上の課題を明らかにすることを目的とする。全国調査の結果、運用実績は28件に上るもののプロジェクト開発や用途転換を目的とする企業発意型事例が7割を占め、制度導入時の大きな目的であった、市民による活用はあまりなされていないことが明らかになった。また、事例調査の結果、合意形成から提案手続きに至るまでの提案リーダーへの作業負担の集中が、提案プロセス全体の進行を遅らせる一因となっていること、提案を円滑に進行させるためには合意形成、専門知識・技術、金銭的負担面の課題を克服する必要があることが明らかになった。