抄録
日本の既成市街地において、地区の特性や住民の意向に合わない規模の開発が多く行われ、マンション紛争をはじめとする建築紛争が多く起こっている事を踏まえ、本研究では建物ボリュームコントロールに着目し、住民主導によるシアトル市のデザインレビュー制度から、参照基準がある場合の個別開発協議の実効性と限界および課題を明らかにし、今後の事前開発協議やデザインレビュー制度の制度設計に関し有用な知見を得ることを目的とした。研究の方法として、協議の議事録と上訴の判決文からの分析を行った。シアトルのデザインレビュー制度では、デザインガイドラインによりよく適応している場合はゾーニングの緩和が可能であり、セットバックや建築スタイル・色彩などは、協議で調整が可能であったのに対し、高さは難しかった。スムーズな建物ボリュームコントロールのキーとなるものは初期段階での建物ボリュームスタディである事がわかった。