抄録
本研究では、『国有財産地方審議会の審議経過』を用い、高度経済成長期前半における旧軍用地の転用と都市施設整備との関係を明らかにしている。旧軍用地の大部分は自衛隊用地や農地へと転用されたが、それでも5,081haという大量の旧軍用地が、工場、官公庁施設、公園、学校、公営住宅などに転用されることとなった。旧軍用地の都市的用途への転用には、高度経済成長下の都市化に伴う都市問題への対応という、変わりゆく都市の在り様に柔軟に対応するための予備資源としての役割と、戦後の制度改革や政策の実現に貢献するという、時代あるいは都市を変えてゆく推進装置としての役割の2側面があった。また、転用上の特徴としては、公的利用という基本的方向が見出せる一方で、地域や各施設に固有の条件との関係も見られた。