抄録
TDMなど個人の交通行動の変更を促す施策導入の検討をより適切に行うために,従来の四段階推定法に代わって,非集計モデルや統合均衡モデルなどが都市圏レベルの交通需要予測手法として研究・構築されている.しかしながら,非集計モデルでは,施策導入時の行動変化を予測する際,自動車LOSは施策導入前と同じデータなど,事前に外生的に設定することが多い.これは一般的に説明力を欠く設定方法である.本研究では,交通基盤整備時における自動車LOS変化の考慮の有無の影響を把握することを目的として,名古屋都市圏を対象に確率的統合均衡モデル(考慮有り)と非集計モデル(考慮無し)の両モデルを適用し,予測値の差を比較分析する.その結果,均衡モデルと比較して非集計モデルは,総発生量に大差はみられないものの,交通手段別交通量は自動車LOSの設定方法によって大きく変動し,特に自動車OD所要時間差が大きい場合や,短・中距離トリップにて予測値の差が大きくなることが明らかになった.つまり,自動車LOSの変化を内生的・整合的に取り扱わなければ,無視できない程度の予測誤差を招く可能性があることを,定量的に確認している.