抄録
河川流域毎に林種に特徴が見られ、その森林資源に影響を受けた地場産業の進展や衰退といった特徴を岐阜五流域から捉えた。人工杉林の多い長良川流域では、それを生かす木材地場産業が育っていず、優良材が収穫出来ないだけでなく、放置され公益的機能が衰え、災害が発生し易くなっていると推察できた。人工スギ林が長良川に次いで多い揖斐川では製材の過半を外材が占め、地域資源と産業の関わりが薄く、上流部における過疎化と不在村林の比率が最も高い流域であった。飛騨川流域は木材地場産業がさかんだが、持続的ではない。宮・庄川、木曽川は歴史的にも森林資源と産業文化、技能との結びつきが強く、元来流域にあった森林資源を生かし、木材地場産業を発達させた経緯が見られた。宮・庄川の家具木工、木曽川の産直住宅は地域振興で重要な位置を占める。しかし木曽川も含めた岐阜県全体での需給を仲介する製材業の異常な衰退から、資源と産業の持続性は危機的な状態である事が分かり、この林業県岐阜から全国の森林荒廃、木材地場産業の衰退を察することができる。特に人為を加えすぎた流域の山地災害や過疎化など、地域の衰弱が推察される。