2008 年 43.3 巻 p. 127-132
本研究では、交通サービスだけでなく一般財の消費も考慮した効用関数を定義し、現在の効用水準を維持した上で、コンパクト性評価指標ベクトル目的関数を最適化するような一般財の消費量や交通パターンを求めるミクロ経済モデルを提案した。このモデルをK都市圏パーソントリップ調査が実施された1984年と1997年の2時点に適用し、総エネルギー消費量や総交通時間の最適解を時点間や地域間で実績値と比較することによって、都市のコンパクト化の可能性について検討した。その成果を下記が明らかになった、1)交通サービスの消費の代替として一般財の消費を増加させたり、自動車トリップを公共交通機関トリップに転換させたりするような施策によって、現在よりも総エネルギー消費量が少ない都市のコンパクト化が可能である。2)その際、総交通時間を実績値からあまり増加させずに総エネルギー消費量を削減させることも可能で、コンパクト化による交通混雑増大への反論にも応えることができる。